共和党は今回の都知事選挙において、特定の候補者を応援することはありません。すでに告示後56名の候補者が名乗りをあげ、ポスター掲示板のスペースが足りないとか、その商業利用や条例違反のデザインが登場するなど、今回の都知事選挙は世界でも稀な民主主義選挙の危機的状況を露呈しています。
そもそも選ばれるべき都知事とはいかなる人物でしょうか?それは東京都という行政地域の実態を見れば自ずから明らかです。
東京都は人口1400万人、税収6兆3千億円、一般会計と特別会計の合計16兆5千億という、ヨーロッパで言うなら北欧や東欧の国家に匹敵するような存在です。従って、その知事を選ぶことは、一国の大統領を選ぶのと同等の重さをもっているはずです。またその行政管理を担う都庁は職員数3万3千人、教員や警察・消防などの職員を合わせると、16万6千人という超巨大組織です。巨大多国籍企業のユニリーバ社は従業員15万5千人と言われるので、管理者としての知事はそのCEOに匹敵するのでしょうが、特定の産業分野の企業管理だけを行う企業経営者と、複雑な背景と歴史を抱えた行政上のありとあらゆる課題、同時に首都として国家行事を担わなければならない都知事の責務は比較にならないほど多様で複雑で重い責任を伴うものです。
ではこれまでも選挙によって選出された知事は十分にその責務を全うするだけの能力や人格や資格を持っていたでしょうか?残念なことにこれまでの都知事もその責務にふさわしい人材であったかどうかは疑問です。しかしながら、東京都は巨大な官僚機構を持ち、たとえ非効率やお役所主義の欠陥が批判されても、そこにおける継続的な管理能力は高いものがありました。
ですから、都知事を選ぶ基準は、候補者の高い見識、豊富な経験や将来ビジョンと同時に、巨大官僚機構を管理し、またその行政能力と整合的で意思疎通が十分に形成されることが求められるはずです。たとえ革新的な将来ビジョンや天才的な政策策定能力の持ち主でも、東京都という官僚機構を十分に動かすことができなければ、その責務を果たすことはできません。
その意味で、今回、候補者として名乗りを上げた56名の方々のほとんどはそうした要件からは外れていると言って過言ではありません。「誰もが参加できる」のが民主主義選挙の理想ですが、その対象は自ずから限られることになります。地域の区政や市政を改革するのと異なり、国会議員や巨大な政令都市の首長には、最低限必要と求められる要件があることを認識すべきです。
その基準でかろうじて選択対象となるのは、今回選挙では、小池百合子現都知事と参議院議員を辞めて立候補した蓮舫氏だけでしょう。記者クラブの記者会見ではこの二名に加えて田母神敏雄氏と石丸伸二氏が登場しましたが、いずれも限定的な組織での限られた経験であり、必ずしも巨大で多様で緊急の課題を抱ええた大東京の知事となる基礎要件を満たしているとは言い難いものです。なぜ候補者全員でなく、この4人が56名から選ばれたのか、なぜ残りの人は排除されたのか?記者会見を取り仕切った側は、その選別における合理的な根拠を示すべきです。選ばれなかった多数は、住民による投票ではなく、事実上、記者クラブによって選択され棄却されたわけですから。
小池現知事と蓮舫元参議院議員の両名に関して、世間では小池氏のカイロ大学卒業疑惑そして蓮舫氏の国籍問題が批判の対象であり、両者の将来ビジョンやその実現可能性、求められる財源と人的資源などが議論されることはほとんどありません。小池氏はなんといっても2期8年知事の立場にあり、その政策も都政の実態を表現しており、2016年に掲げた「7つのゼロ」(待機児童、残業、満員電車、ペット殺処分、都道の電柱、介護離職、多摩格差)を元に、今回選挙ではそれらの政策の継続を訴えているのですが、問題は自らを挑戦者と位置付けている蓮舫氏が、それに対抗できる、あるいはそれを超越した魅力ある政策や施策を提示できていないことです。明治神宮外苑の再開発問題でも、単に工事をストップさせると主張する一方で、改革に必要な財源や手続きなどは自分が都知事になってからでないと何とも言えない・・という状況では、小池都政をリセットすると言われても、ここまで進めてきた行政・企業・市民団体・都民も戸惑うばかりです。
そもそも、築地市場移転、新型コロナ対策、オリンピック対応など、小池都政を根本から揺るがす問題に対して、少なくともこの4年間どうして十分な対案や解決策を提示してこなかったが疑問です。挑戦者としては小池都政を逐次調査・評価し、それへのオルタナティブな都政のビジョンを選挙前に出版するぐらいの努力が必要ではないでしょうか。
共和党としては、小池都政のさまざまな失政や不作為に対し、厳しい評価を加えるところですが、それらを、挑戦者を自認する蓮舫氏の公約や政策提言に見出すことが出来ないのは残念です。
以上が、今回、都知事選挙において、一応、候補者としての要件を満たす小池氏や蓮舫氏をも積極的に推薦しない基本理由です。
最後に、今回の都知事選は「民主主義選挙の本質的な欠点や欠陥」が明らかになった選挙です。56名の立候補者の中には、単なる自己宣伝で立候補した方もおられるかもしれませんが、それ以上に問題であり民主主義にとって危険なのは、これまで行政にも政治にも大組織の運営にもほとんど携わったことのない候補者が、膨大な選挙費用をかけてポスターを貼り、大型街宣車を回し、スタッフを駆使して選挙活動を展開していることです。その背景には、資金を提供し、選挙実務を指揮し、膨大な映像や宣伝番組をWEB上で流すプロの組織が潜んでいることが推察されます。無名のあるいは無経験の若い候補者を万一にでも当選させれば、そのような勢力が今度は新たな利権チャネルとして都政を食い物にしていく危険があります。このことこそが、現代民主主義の病理であり、今回の都知事選挙に潜む最大のリスクであると指摘しておきます。
共和党はこのような現代民主政治の欠陥と病理を解決するために全力で働き闘っていきます。
2024年6月24日
共和党物差 首藤信彦
共和党が特定の候補者を支持しないことは良く理解できます。東京都政に関する考察の記事を公報くださるよう期待します。また東京都で活躍するリーダーのコメント記事も掲載を希望します。