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都知事選挙の結果について クリックしてご覧ください。                             共和党物差 首藤信彦

1.7月7日都知事選挙結果

前代未聞、総勢56名の立候補者による都知事選挙は、小池百合子氏が291万8015票を獲得して勝利し、三期目の都政を担うことになった。次点に石丸伸二氏が165万8363票で入り、そして当初は小池氏と一騎打ちが期待された蓮舫氏が128万3262票で3位に沈んだ。

 小池百合子氏は直前に行われた江東区衆議院補選応援での不人気や神宮外苑開発スキャンダル、カイロ大学経歴詐称疑惑に加え、体調不良、支持母体の都民ファーストの会の退潮、支援勢力である自民党の政治資金問題など、満身創痍の状況で、必ずしも有利な選挙戦ではなかったが、敵失もあって、結果は大差で勝利した。


2.蓮舫氏の早すぎる失速

 小池氏が2位に二倍近い格差をつけて悠々勝利した原因はいうまでもなく、石丸氏という新勢力の登場ではなく、対抗であったはずの蓮舫元参議院議員の自滅的失速であった。

敗戦の責任は蓮舫氏個人というより、今回の都知事選を担った選対と立憲民主党の選挙戦略にあった。選挙直前まで現職の参議院議員であった蓮舫氏は様々なメディアでその言動や活動が報道される立場にあり、実際、立候補の意向表明があった当初は、勢いに欠く小池氏が三選出馬を取りやめるのではないかとの噂すらあった。

 そんな状況で共産党主導のスタートダッシュは、公示前の選挙活動であり選挙法違反だとの批判が発生したり、共産党の主張するテーマが必ずしも「新しい東京」を期待する層にアピールしなかったり、むしろ早期の失速につながっていった。共産党そして社民党などの旧左翼陣営は、かつて「革新」と自称していたように、旧態依然とした自民党の保守政治に対し、時代の前衛としての姿勢をもっていた。しかし、冷戦構造崩壊後には社会主義思想の後退とともに、次第に保守・保身的な傾向が強まり、福祉や医療などの分野で確実に地域政治勢力を確保する姿勢に変わっていった。いまや「革新=イノベーション」という言葉を聞いて、共産党や社民党を思い浮かべる人は少ない。

 スタートに失敗した蓮舫氏、そこから新たなパワーを注入して、情勢を盛り返すだけの力は、今の立憲民主党にも候補者蓮舫氏自身にもなかった。


3.共産党主導に見えた選挙戦の反省

 そもそも立憲民主と共産党との間でどのような協力関係の合意ができていたのかは不明だが、立候補を前提としたうえでも、立憲民主党の参議院議員として都民の関心を引き付ける活躍の場がいくらでもあったはずの蓮舫氏がそうした活動を見せず、その一方で、同氏の都政挑戦が真っ先に共産党の広報活動の中に登場したことには疑問を感じる。

 実際、蓮舫氏が都政挑戦を表明したときには、これまでにもあった待望論が一挙に現実化したような高揚感が支持者だけでなく都民各層にもあったが、それが急速に失われていった。

蓮舫氏のスタートダッシュの勢いが早期に萎えたのは、協働する共産党が蓮舫氏をあたかも自党候補であるかのごとく、選挙を主導し始めたことによる。そこから「立憲共産党」という絶好の蔑称が、対立する各陣営から一斉に言われるようになった。

本来、蓮舫氏が立憲民主党を離党して無所属出馬するのは、多くの他党・諸派関係者に応援を期待すると同時に、連日の政治スキャンダル報道などで、既存政党を忌避したい無党派層を取り込む目的もあったはずである。共産党組織とその支援活動がないと地域での選挙活動を展開できないという立憲民主党の虚弱体質があるにせよ、ここは万民の支持を求めて無所属候補としての姿勢と外観を保つべきであった。

 そんなことは立憲執行部でも承知だろうが、それでも共産党に過度に期待したのは、実は都知事選挙ではなく、その次に控える岸田政権の解散総選挙において小選挙区内で共産票を獲得して当選したいという立憲民主党の首都圏議員の目論見があったのだろう。

 しかし、結果的に最大の支援組織である労働組合「連合」の公式・非公式の支持も失い、基礎票の積み上げをすることができなかった。

 共産党とその政策が前面に出れば出るほど、若者票や無党派票は減少していったことが容易に理解される。共産党が考える貧困や社会問題も、現代社会に生きる若者の絶望や無党派層の社会抜本改革への期待などと必ずしも軌を一にしているわけではない。


4.次の東京都へのビジョンを欠いた挑戦者

 問題の二点目は、蓮舫氏が二期八年でほころびを見せた小池都政へのオルタナティブを示すことができなかったことである。自らも東京を地盤とする参議院議員でありながら、東京が抱える深刻な問題や将来への展望を、具体的に描くことができなかったのは、蓮舫氏自身の問題である。たとえ短期の準備でも、「私ならこう解決する、私ならこういう東京を作って見せる」という強いメッセージが一度も前面に押し出されることはなかった。

逆に、選挙前はまったく無名のAI起業家の安野貴博(たかひろ)氏は、90ページを超える東京都改造のマニフェストをWEB上で公開し、都民と意見交換するなど、自分が都知事になれば東京をどう変えたいかを提示し、無経験・無支援の新人ながら15万4638   票を獲得し、田母神俊雄氏につぐ5位に食い込む健闘を見せた。その事実は、都民が何を期待しているのかを表現していると言えよう。苦しい暗い時代だからこそ、人々は希望―Hopeを求めるものである。

蓮舫氏は事業仕分けが得意で、予算の無駄をなくすと自負するが、小池都政の予算と決算を具体的に分析し批判するわけではなく、「当選したら、洗いなおして考えます」みたいな話では、都民から一体これまで何をやってきたの?と批判の矛先が自身に向くのを避けることはできなかった。


5.不発のスキャンダル追及

 東京都の新しいビジョンも打ち出せない蓮舫氏にとって、選挙で勝利するために小池氏の暗点やスキャンダルを突くという戦略も、準備不足を回復するまでにならなかった。神宮外苑の樹木伐採問題なども、具体的にどこをどう変えたらいいのか、代替案や別なオルタナティブな開発計画がなければ、不安・不満・反対の市民運動レベルと変わらない。三井不動産やデベロッパーが悪いといっても、それなら、東京駅前や大手町開発の三菱グループはどうだ。。ということになる。都政運営には民間企業とのコラボが必要であり、それを一方的に批判しても成果は期待できない。

 一方、東京には都政を揺るがすような大問題がごろごろしている。PFAS問題や、リニア鉄道の地下工事も、事故や失態を繰り返す羽田空港もある。それらの問題が選挙戦で表面化し議論されることはなかった。

 最大の問題であり争点でもあるのは、東京の未来である。以前に小池都知事は東京をロンドンのシティやNYのウオールストリートに肩をならべるフィナンシアルセンターに発展させるという野心的構想を表明していた。確かに、東京は巨大都市ではあるが、文化・観光・経済面において、世界の主要都市とは比べ物にならない田舎大都市のままである。昨今の一方的な円安や日本売りも、東京が本当に世界的なフィナンシアルセンターに変貌できていれば、少しは違ったものになったかもしれない。

 このような巨大で、それなりの実力と実績を持った二期八年の小池都政を根本的に覆すビジョンがないところから、蓮舫氏とその支援勢力は、枝葉末節のカイロ大学学歴詐称事件に批判を集中させ、あたかもこれによって小池氏を犯罪者として都知事候補者から脱落させられると勝手に考えて批判のエネルギーをそれに投入した。その真偽をここで問うことはしない。しかし、本来、個人情報である卒業記録などを第三者が獲得することも難しく、大学当局・エジプト政府の立場など、複雑な外交課題を克服しなければならないテーマに、これで短期の知事選で勝利できると一体だれが本気で考えたのであろうか?


6.無党派・若者へのアピールに失敗

 第三に、無党派層や若者層への訴えはまったく功を奏しなかった。所詮、動員で来ている駅前の群衆に蓮舫氏がいくら「若者支援に全力をつくします」と叫んでも、本物の若者は感動することがない。具体的にどういう政策や方策を立案・実施するのかが提示されなければ、若者側も「それは良いかも」と受け入れてくれないだろう。NETやWEBを使っての対策もまったく十分でなかった。まったくの個人で立候補し、貧弱な資金しか持たない新人ではなく、何度も国政選挙を戦った人材と経験の豊富な立憲民主党がどうして、そのクラスターをターゲットとするNET/WEB戦略が展開できなかったのか疑問である。

 評判の悪い小池都知事を表立って支援する若者や女性は少ないが、実際に聞いてみると、子育て世代や無党派層にかなりの底堅い支持を感じる。もし本当に無党派層や若者層を支持者として取り込みたいなら、蓮舫陣営の総力をかけた政策立案とキャンペーンが必要であった。


7.石丸氏の跳梁と実態

 失速し続ける蓮舫氏をしり目に、WEBで支持を広げていったのが石丸伸二氏である。これは一面では選挙戦におけるWEBの重要性を見せつけることになったが、それは決して絶対的なものではない。直前の江東区衆議院補選では日本保守党の飯山あかり氏が連日のWEBライブ配信で、大きな関心と支持を獲得し、終盤では鉄板と言われた立憲民主党候補に迫る勢いを見せたが、現実の開票では4位にとどまり、既成政党の活動や逆に個人の伝統的街宣中心の須藤元気元参議院議員などの後塵を拝することになった。

 石丸氏が一般の予想を超えて2位に食い込むまで票を伸ばしたのは、そのWEBの準備期間とそれを支える財力・プロ勢力の力による。そもそも同氏は安芸高田市長の後半から、WEB活用で関心を集め、任期末期では「次は東京都知事に挑戦予定」という提灯情報が大量に流されていた。本人を見たことも、WEBやビデオを見たこともない人も、石丸氏が「WEBでは超人気の有名人」で、もうすぐ「都知事選に立候補する予定」も知っていた者が多かった。それはこの業界の常套手段で、火事暴動報道とでも言おうか、「火事で群衆が大騒動」という情報が呼びかけとなって、本当に群衆の大暴動を引き起こすことになる。

その石丸映像というは、市長や「利権屋」「古い政治家」とレッテル付けされた地方議員をしかりつけたりするまるでテレビドラマの場面のようなドラマチックな映像で、そもそも都知事選よりはるかに前の段階でその方向性に人材と資金が大量投入されていたことがわかる。


8.アテンションエコノミーの跋扈

 こうした手法の先駆は言うまでもなく、明石元市長の泉房穂氏で、議会との対立記事や映像が多くのアクセス・再生回数や「いいね」を生み出した。むろん、同氏の場合は様々な課題について行政組織や議会と議論を重ね、選挙の洗礼を受けて長期間市長の職を全うしたので、石丸氏などとは比較にならないが、それでも、最近の独断独裁的な首長の登場には、泉氏への世間の注目と称賛が影響していると思われる。

現代、WEB時代の弊害の一つは、アクセスの多さが対価を生むようになり、過激なタイトル、映像などが、ことの是非はともかく、一部のブロガーや映像提供者に収入を生み出すようになったことである。社会問題化した「私人逮捕」の映像や過激な場面、さらに内容とは無関係な過激タイトルなどが猛烈な勢いでWEB世界に蔓延している。WEBのインフルエンサーなるものが、若者のヒーローとなりつつある。幼少時から想像を絶する努力を積み重ねたスポーツ選手などと違って、自分でもすぐ安手に手の届く英雄像にみえるのだろう。

アテンションエコノミー(関心経済)と呼ばれるように、アテンション(注意)が貴重資源と変容し、一種の通貨的な価値を持つような現象が登場した。

都知事選挙期間中のYouTube動画などWEBを見れば、アルゴリズムの関係もあろうが、大谷翔平のホームランを越えて、ほとんどが石丸氏の映像であることに驚かされる。しかもそのタイトルがすべて石丸氏をスーパースターとして扱い、あるいはそのように誘導する選対の視点でつけられていて、内容の動画とはかなりかけ離れたものが多い。しかし、そのようなYouTube閲覧者のほとんどはタイトルと最初の数十秒分の動画しか見ないので、石丸宣伝のタイトルと現実の動画とか乖離していても、それほどの不満や批判は感じないのだろう。電車の中では字数の限られたエックスでも携帯画面で読むのに苦労するのに比べれば、タイトル画面やTikTokの瞬時映像はどこでも瞬時に脳裏に焼き付く効果がある。

さらに危険なのは、石丸氏の陣営が作成したものだけでなく、YouTube動画を無関係の聴衆が拡散していく可能性である。例えば、候補の演説を携帯電話で動画に撮り拡散していく手法は、もし、何らかの手段で、有料でそうした撮影者を集めることが簡単にできれば、巨大な情報量を作り出しうる。例えば、ネット業務委託大手のクラウドワークスなどでは、石丸氏の演説や会見の切り抜きや動画編集作業に数十件の募集や依頼があり、膨大な人数と資金が投入されて石丸氏の動画がWEB上に掲載されていたことが指摘されている。そのような依頼は、ネット業務委託大手だけでなく、やがて弱小の委託業者さらに今後は、困窮する若者を犯罪にまで引き込む闇バイトサイトなどの関与も危惧されるだろう。

選挙法上も、このような特定個人の宣伝に対価が支払われるのは「運動員買収」に相当すると考えられるが、これまでにない要素があるので、総務省や警察がどこまでそれを追及するかはわからない。それ以上に、これは選挙の本旨に反するだけでなく、民主主義システム自体を劣化させる可能性がある。早急に詳細調査分析そして規制が求められる。


9,新時代に跋扈する旧政治屋勢力と新利権集団

 選挙戦では2位に着けたが、石丸氏の東京ビジョンや政策はほとんど語られていない。街頭演説でも自分のエリートサラリーマン体験とかがほとんどで、東京の課題も、現代社会の困窮や困難もそして政治の腐敗についても何の主張もなかった。これは正直驚きで、なぜ東京で育ったことも、学生時代の体験も、現在目にする東京の困難もほとんど知らないか体験したことのない候補者に、一体だれが期待の一票を投じたのであろうか? 政治課題やその解決を訴えるのが既存政治家なら、そうした問題にまったく触れずに、クラス会での挨拶程度の話を繰り返す候補が清廉で若々しくみられるのだろうか?

 石丸氏は既存の政党や政治家を「恥を知れ」と面罵するが、一方で同氏の政治活動および選挙活動はまさに与野党を渡り歩く選挙参謀や選挙商売人によって運営されており、またそれへの資金注入は「公的プロジェクトや政治利権への接近を試みる新興ビジネス界」によって行われているふしがある。その意味で、石丸選挙は手あかのついた政治屋が新しい衣をまとっただけの古い政治以外の何物でもない。

 なによりも恐れるのは、この手法がある程度の成果を挙げることがわかり、今後はさらに多様なバリエーションが登場してくることである。そのことは、まさに、混濁の政治に新しい政治の風を吹き込むことの障害になる。現代社会の貧困や閉塞状況に、政治を変えようと立ちあがる新世代には別な大きな障壁となるだろう。

 その一方で、小池百合子そして蓮舫という政治の世界を泳いで来た手あかのついた候補者ではなく、フレッシュな新しい政治家の誕生を期待して票を投じた若者は、おそらく時間の経過とともに現実を知り、一層、政治への嫌悪感を抱きそして政治離れを加速することになる可能性もある。いずれにせよ、健全な民主主義の発達には、このような新に登場したリスクに対して十分な理解と対策が求められる。

 こう考えると、N国党の大量候補者と掲示板占拠の弊害や一部の公共放送での破廉恥言動などもまだ害は少ないと言える。このような行為が馬鹿げており、民主主義政治の否定以外のなにものでもないことは容易に理解できる。

 しかし、今回の石丸氏の大躍進が一見、WEBなどの活用や、聴衆のYouTube動画投稿や膨大な再生回数のように、あたかも新時代の民主主義のような新鮮な装いを持っているが故に、その弊害に気づくのはむつかしいかもしれない。ぜひ、政党・政治関係者そして総務省や市民団体などもこのリスクに気づいて、対策を急いで欲しい。


10.最後に、共和党としての反省の弁も述べたい。

 今回のように前代未聞の都知事選になることは我々も予想していなかった。その前哨戦とも言うべき江東区衆議院補選では、現代民主主義の退廃を予見させる事態が多数発生したが、さすがに巨大な課題を抱えた東京都の知事選ともなれば、二期八年の実績というか都の官僚組織の慣性をもつ小池都政に、蓮舫氏が新しいビジョンをもって挑戦し、都政が変わることによって政権交代への道筋とする立憲民主党も総力を挙げてその実現に努力するだろうと考えていた。

 そこに共和党のような弱小組織が参入することにはその効果に限界がある。。。と考え、静観することにした。しかしながら、現実の都知事選では、これまでの都政の総括も行われず、多数の深刻課題も取り上げられず、待ったなしの防災対策ですら単なる言葉の提示に終わってしまったことを考えると、たとえ弱小とは言え、共和党が候補者を擁立し、すくなくとも、あらゆるメディアとコミュニケーションツールを使って、「新しい東京=次の東京」の姿を都民に提示すべきであったと思う。

 今回の都知事選挙は日本の民主主義が曲がり角。。というより滅びの道への分岐点にさしかかっていることを明示した機会であった。共和党としても今回の選挙戦に参加しなかったことを反省し、この選挙戦前後で一体なにが起こったかを分析し、4年後の都知事選はもとより、何時まで続くかわからぬ小池都政が突然死を迎えたときにも、直ちに対応できるように準備を積み重ねていく所存である。

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